「あぁ。

 もう少し休むよ。

 朝になったら、熱くらい下がっててくれりゃ
 いんだけどな」



そんなオレにアイツ自身が
助け舟を差し出す。



「そうだな。

 明日も10時から検査入ってるから。
 朝、顔出すよ。

 お休み、海斗」




そのまま、アイツの病室を出たオレは
一気に屋上へと駆け上がった。




屋上の外の空気が
無性に吸いたかった。



後は……久しぶりに、
一服したかった。







普段は吸うことのない煙草。






コイツをはじめて吸ったのも、
あのガキがきっかけだったか。








紫煙を燻らせながら、
屋上のフェンスに背中を預けて
空を見上げる。







今日の空も、何処までも青く
澄み切った……
エネルギーが漲る空だった。





一本吸いきると、
大きく伸びをする。





先ほどまでの息苦しさからも解放されて、
オレは何事もなかったかのように、
館内へと戻った。





「お疲れ様です。

 安田医師、まだいらしたの?」



そうやって声をかけてきたのは、
看護主任の水谷さん。





チっ。




思わず舌打ちをする。




「お疲れ様でーす」

「はいっ。
 お疲れ様です。

 って嵩継くん、本当に疲れてそうね。

 井津君のこと、私たちも知ったわ。

 お友達の為に、
 貴方も無理しないのよ。

 井津君のことは、私たちもちゃんと
 気にかけるから。

 今の安田医師の患者さんは、
 井津君だけじゃないのよ。

 はい。鏡見なさい」