オレは、上村医師によって
アイツの主治医になることを
突きつけられた。




海斗の母親には、
すでに上村医師より、
告知はされた後で、
おばさんの希望で、
海斗への告知は伏せる運びとなった。



そして始まった、
海斗の抗がん剤治療。





1から3週間を1クールとして、
2~8クール行われる。



抗がん剤の副作用により、
吐き気や発熱に苦しむアイツを
少しでもラクにしてやりたくて、
仕事の合間に、
海斗の病室へと入り浸る。



「入るぞ。海斗」



声をかけてドアをあけると、
ウトウトしていたのか、
ベッドの中でもぞもぞと動いて目が開く。


そのままアイツに
額に手を当てる。





やっぱり……
副作用の熱は、下がんねぇか。





「まだ熱、さがんねぇな。

 水枕持って来てやったから」





海斗の体を抱え上げると、
枕を早々に取り替えて、
もう一度休ませる。





「なぁ、嵩継……
 俺、治るの?」







不安に包まれたアイツの声が
オレの心に
突き刺さるように届く。




チクリと痛む心。




全てを伏せて、
骨肉腫の治療を始めていること。






こんなにもオレを信用してる
コイツに、全てを
包み隠して接しないといけないオレ自身。





感情のどれもが一斉に、
押しつぶすように流れ込んできて
息が出来なくなりそうなほど、
追い詰められる。






「オレも
 出来るだけのことするから」





オレも出来るだけのことをするから。






そう言うのがやっとだった。




このままこの場所にいるのに、
オレ自身が絶えられそうになくて
病室から立ち去る術を考える。