そして卒業式前日……
嵩継の母親は過労死。


卒業式の日、
アイツは姿を見せず……
アイツの担任に
卒業証書を預かった俺は
アイツの自宅に持っていった。


会えたのは一瞬。

俺はアイツを
抱きしめたかった……。


でも親戚らしい奴等が
アイツを呼びに来て……、
俺は卒業証書のみを
渡して後にした。


そして翌日、
サッカー部の奴等と
葬式に参列して……
その日の夜、
親戚連中が帰ったのをいいことに
俺は嵩継の家に泊まった。

嵩継は一言も喋らず
母親の位牌を見つめてた。


そんな嵩継が何処かに
消えちまいそうで
俺は朝まで嵩継の傍にいた。

朝、太陽が昇った頃には
俺は嵩継の布団の中で、
アイツは丁寧に
俺の朝食を作って
俺を学校に送り出した。




『嵩継、
 今日も俺こっちに来るから。
 いいだろう』

『好きにしたらいいだろう』



玄関先で短く会話を交わした。



学校が終わって
帰ってきた時には……、
嵩継が住み慣れたアパートは
解約され……
アイツは
何処に行ったかわからなくなってた。






嵩継、
俺……わかんねぇよっ!!


嵩継にとっての
俺ってなんだよ。

簡単に捨てられるような
ちっぽけな存在なのかよ。


目の前にいるアイツに
言えるものなら言ってやりたい。

昔の俺だったら
……言ってた……。


言葉が刃になるなんて
知らなかった頃の俺には……。


けど今は違う。


アイツに……
こんなこと言えない。


言ったら……
アイツはまた
俺の前から姿を消す……。

そんな気がするから……。



深くは言わない。


ただ……
今は嵩継を
傍で感じて居られれば……

そして願わくば
……あの頃に……