「父さん、
 朝、言われた時間なんだけど……」


そう言いながら姿を見せた
少年に、その人は声をかけた。



「すまんすまん。

 勇人、千尋、
今日から家で下宿する嵩継だ。

 明日から、鷹宮で
 ジュニアレジデンシーとして
 勉強して貰う」

「初めまして。
 鷹宮千尋です」

「勇人です」


その人の息子だと
思われる二人は、
琥珀色の髪の少年から
名前を名乗った。


「嵩継、私の息子たちだ。
 
 今は医大の受験を目指して
 勉強している。
 
 仲良くしてやってくれ」


少し目を細めて、
そう言ったその人は……
父親そのもので……
オレ自身、
その人の言葉に胸が締め付けられた。


「勇人、千尋。
 
 彼の荷物を運ぶのを
 手伝ってくれないか?」


その言葉の後、
二人の少年は
オレの衣装ケースやダンボールを
分担して持ち上げた。


病院の裏にそびえる
真っ白い建物。


コンピューターの前で、
網膜と指紋を読み取って
携帯電話をかざして開錠する玄関。


なんだよ……この家は……。


オレの常識の物差しで
はかることの出来ない事が
次から次へと置き始める。