「学生時代、
 膝の水抜きしたことあるんだね」





そう言って、
患部にゆっくりと触れた上村。




そしてあの頃のように
太い注射針を刺して、
抜いていく。




その液体の色を見つめる
アイツと上村が、
無言でお互いをアイコンタクト。









水抜きが終わると、
膝は曲げれるようにはなったものの、
そのまま家に帰されることはなく、
俺は何故か、
入院患者として手続きされた。








車椅子で連れて行かれた病室。






椅子からベッドに移動する俺を
アイツはサポートする。







「何で入院なの?

 俺、店があるって言ったよな」



「ったく。

 てめぇ、まだ言ってやがんのかっ。

 膝の水抜きしただろ。
 そん時に、通常とは違う色の液が抜けたんだよ。

 原因突き止めてなおすまで、
 気になんだろうが。

 明日から暫く検査な。

 今から、おばさんとこには顔出す。
 
 おばさんの体調次第で、
 鷹宮で部屋とって休ませる。
 
 だったら、
 オレが両方様子見に行きゃいいだろ」



「おふくろ……頼むわ……」



そう言って、服のポケットから
家鍵を放りなげた。




他に言いたいことも沢山あったのに、
ようやくの想いで告げられた言葉は
それだけ。




その言葉を受けて、
嵩継は『あぁ』っと言わんばかりに
手をあげて病室を出て行った。