「さっき、
 貰ってきたから行くぞ」


アイツは、
俺の手荷物を持ち上げて、
おふくろの背中に、
片手を添えながら俺の方にも
意識を向けて。


エントランス前。

会計の手続きを
終えると一度、
俺のところに顔を出して

「車、まわしてくる」っと

一言告げた。




暫くすると、
またひょっこり顔を出して
嵩継は、荷物を持ち上げる。




嵩継に連れられて向かった
駐車場には、
見慣れない
青い車が止められていた。



「あれ、
 お前の車?」

「あぁ。
 ちょっと前に知り合いから
 破格で譲り受けた相棒だ」

「って、けど嵩継……
 車、乗ってた?」

「いやっ、高3で免許取ってから
 乗ってなかったなー」



おいっ。


待てよっ。


そのペーパーの腕で、
俺とおふくろ、
乗せるとか
言ってんのか?

コイツ。



「ってか、嵩継。

 俺、命が惜しいから
 タクシー捕まえるわ」


そうやって、
その場から
立ち去ろうとする俺の腕を
アイツは、
グイっと引き寄せた。



「わかったって。
 わかった。

 運転が
 オレじゃなかったらいんだろ。

 オレも両手数えられる程度には
 コイツ、乗ってんのによ」


ぶつくさ文句を言いながら
ポケットから取り出した
携帯電話で、
何処かに電話をかける。



まだ両手で
数えるられるくらいしか、
乗ってねぇんジャン。

6年間の
ペーパードライバーの車に
誰が乗れんだよ。

しかも、まだ10回
乗ってるかどうかだぞ。