戸惑いの中で、
始まった入院生活も
ようやく馴染み始めた。



ベッドから観察する、
アイツは、
昔から全く変わってなくて。



忙しなく動き続けながらも、
細やかな気遣いは、
大っぴらに。


一見、ガサツそうに感じる行動が
アイツにとっての、
気遣いで、
昔から変わらない世話焼きで。


入院患者の、
じいさんや、ばあさんなんかは、
アイツが病室に来るのを
心待ちにしてる風で。



あちこちで、
じいちゃん、ばあちゃんから貰ったらしい
飴玉や、チョコレート。


挙句、饅頭なんかを
白衣のポケットから
掴みだして、
俺の病室で食べながら、
ひと時の休憩をする。



そして……
今日も、アイツが
近づいてくる足音が聞こえる。




ベッドの上、
体を起こして
アイツの訪れを待つ。



コンコン。


ドアをノックする音が聞こえると、
すぐに「よっ」っと、
アイツが声を出して
病室の中に顔を出した。



その途端、
同室の、ばあちゃんや、
じいちゃんが我先にと、
ざわめき立つ。



嵩継、お前……
どんだけ、ジジババの
アイドルやってんだよ。


無視すりゃいいものを、
アイツは、
片っ端から
ジジババのベッドサイドへと近づいて、
順番に言葉を交わしながら
俺の方へとやってくる。