患者はバイク事故を
起こした20代の男。
朝の通勤中に道路に
飛び出してきた猫を避けて転倒。
自分で捻挫と思い込んで、
痺れる足を引きづりつつ、
バイクを押して帰宅。
んで湿布してみたけど、
痛みが増すからと
自分で救急車を呼んでくるらしい。
おいおいっ、
救急車をタクシーに使うなって。
国民の貴重な税金だろうが……。
パーティーリーダーを筆頭に、
処置室で受け入れ準備をしていると
とんでもない奴が運ばれてくる。
よりにもよって
その間抜けな事故を
起こしたのは
オレの後輩で
……親友……。
……幼馴染……。
そして……、
今、オレが一番あいたくない
過去のオレを知る当事者。
出津海斗だった。
「安田。
X-P行ってこい」
そう言われて
オレは海斗を連れて、
レントゲン室へと向かう。
レントゲン室に向かう途中、
無言の緊張が走る。
「なぁ……。
なんで連絡くれなかったんだ?」
無音空間を立ち切るように
車椅子をゆっくりと押すオレに、
振り返ることもなく、
海斗が言葉を紡いだ。
「研修中は忙しいんだ……。
水谷さんから、
お前の連絡先は貰ってた。
ただ……
連絡する暇がなかった……」
責める様に
投げかけられる言葉を
当たり障りのない言葉で
返答しながら、
この二人きりの時間が
早く終わってくれるように
ひたすら祈り続けた。



