Riz夫人の作った
サラスパに
フランスパン・スクランブルエッグ。

そして珈琲を
胃袋におさめると、
ゆっくりと席を
立って食器を流しへと運ぶ。

オレの後に続いて
勇人君も千尋君のお皿を
一緒に集めて流しへと持っていく。


「嵩継さんは
 何してたんですか?」


蛇口からお湯を出して、
スポンジで食器を洗いながら

勇人君はオレに訊ねる。

「オレはとりあえず
 医者になりたかった。
 
 医者になってたら
 食いっぱぐれねぇし、
 おふくろ養ってけるだろ。
 
 けど学生実習<ポリクリ>で
 いろいろまわって、
 外科がいいっなって思ったかな」

「外科……
 どうして外科がいいって……」

「なんだろうな。
 何か生の実感が強かったんだよ。
 けど、はげ教授<おやじ>殴って
 講座にはすすめなかったけどな」

「はげ親父って?」

「大学の教授だよ。
 教授。
 まだ禿げる年でもねぇだろうにな、
 禿げててなー」

「嵩継、何時までも
 勇人と話してないで
 着いてきなさい」

「あっ、はい院長。
 行きます。じゃあな」


早々に、
勇人君との話を切り上げて
オレは院長と肩を
並べて病院へと向かう。


「そろそろ、
 嵩継にもERとオンコールの
 シフトに入って貰わんとな。
 研修中とはいえ……
 ERも並行して鍛えるのも
 いいだろう」

突然の院長の言葉に
オレはびっくりする。

ERとは本来ならば
救命救急室のことたが、

この病院では
少し意味が違う。


鷹宮では救命救急室として
救命専門スタッフが居るわけではない。