だからなのか……、
オレには、
この家族の中で、
一番、コイツが話しやすかった。


「はいっ、嵩継君どうぞ」


オレが席へと座ると
即座に、
リズ夫人が朝食を並べてくれる。

向かい側の席で食事をすすめる
院長先生と視線があい、
すぐに挨拶の言葉を発する。


「おはようございます」

「おはよう。
 嵩継、
 仕事にはそろそろ慣れたか?」

「はい。

 ようやく以前よりは
 動けるようになりました。

 今日から……
 また別の科を研修させて貰います。」

「そうか。

 勇人、千尋、
 お前たちはどうだ?」
 
「勉強の方は順調だよ。
 早く、春からのクリクラ(院内実習)が
 始まらないかな。

 教科書だけ見てても
 つまらないよ。

 今日も学校の後、
 現場を見学させて貰ってもいいですか?」


院長の質問に、
そう切り返すのは、
千尋君。


おいおいっ。

なんだよ、
この余裕。


オレなんて、クリクラ始まったら
バイトどころじゃなかったから、
来てくれるなって感じだったけどな。


コイツは、
もう現場で経験を積みたいのか。




「千尋、学校の後、
 何時でも顔を出しなさい。

 医局には話を通しておくよ。

 勇人はどうだ?」

「今、まだ自分が進みたい専攻を
 決めるのは早いって言うのは
 知っているんだけど、
 お父さんは、
 鷹宮に精神科を作る予定はありますか?」



唐突に切り出した、
勇人は、
院長の目をじっと見つめながら
唇を強く噛みしめる。


「鷹宮に精神科か……。

 実は、それも踏まえて
 現在、父さんの親友と
 話し合っている。

 多久馬と、神前から協力を得て
 新設出来ないものかと」

「そうだったんですね。

 なら、その話……
良い方向で進んで貰えれば、
 僕の勉強も役に立つかな?」



小さく呟きながらに、
勇人君は、食事を再開した。