「あの……。
 
 俺、嵩継と高校時代を共にした
 井津といいます」


そう言って、
ボスキャラの方に挨拶を告げる。


川野と呼ばれた看護師は、
すでにボスキャラに一礼して、
この場にいない。


「看護主任の水谷と申します。
 
 安田先生は、先ほど
 勤務を終えて帰宅されました。

 伝言があれば、
 かわりにお伝えしますが……」

「すいません。

 紙とペン、
 お借りできませんか?」


主任さんにそう告げると、
渡されたメモ用紙に、
俺の連絡先と
携帯アドレスを記入する。


「嵩継に
 これを渡してください」

ベンと一緒に、
連絡先を記載した
紙を手渡すと、
そのまま、
ステーションの前を後にした。


建物を出て、
バイクに向かうまでの間に
スマホの電源を入れて、
氷夢華へと連絡をするもの、
その日もあのガキは捕まらなかった。


アイツも
喜ぶと思ったのに……。




いやっ……。

でも……アイツが、
わざと俺からの電話を避けてるとしたら
迷惑に思ってるかも知れないな。


そう思って、
メールを入れるのを思いとどまった。



6年だ。


今年で……7年目。

あのガキも、
嵩継から
解放されてるかも知らねぇよな。



アイツに今も捕らわれてるのは、
俺だけかよ……。


バイクにまたがって、
エンジンをかけると、
ヘルメットを装着して、
自宅へと走らせた。