「事務長、
父の弁護士の先生には?」
「はい。
先程、私の方から
御連絡させて頂きました」
「それで……、
今回の事件の背景は?」
「私どもで
確認出来ていることは、
出津さんと
最後に会っていたのは
安田先生のようです。
出津さんの希望で屋上に連れ出し、
急変が入り安田医師は
出津君を屋上に
残したまま現場に戻ったようです。
出津さんは骨肉腫末期患者。
担当医の承諾がないままに、
安田先生が
病名を告知するなどと
これまでもにも
安田医師絡みで
いろいろと問題が出来ているようです。
院長が問題ある
レジデントを当病院に連れてくるから……」
何度も何度も、
事務長の口から
繰り返させれる
嵩継さんの苗字。
「事務長っ」
僕は……
事務長を諭すような
トーンの低さで
釘をさす。
「申し訳ありません。
千尋坊ちゃま」
「事務長。
嵩継さんが海斗さんに
どういう経緯で
告知に至ったかは
僕にはわかりません。
ですが嵩継さんと海斗さんは
学生時代の親友同士。
何か嵩継さんには
思うところがあったのでしょう。
問題は嵩継さんが
海斗さんに告知を
したかどうかではなく
今後の対策です。
勇人に病院内の
警護の強化を依頼しました。
多分、今頃は
警備員の数も増えるように
手配してくれているでしょう。
お父さんが
オペ室から出てきた時に、
これ以上負担が
増えないように
僕たちでサポートします」
「私も事務長として
微力を尽くさせて頂きます」
エレベーターが開くと、
エレベーター内には
水谷さんと勇人が先に乗り込んでいる。



