「もしもし。鷹宮です」

「夜分に申し訳ありません。

 緊急にお知らせすべき事態が起き、
 電話させて頂きました。
 
 奥様は御在宅でしょうか?」




いつもは冷静な、
水谷さんの声のトーンが
いつもと違ってた。 





「あらっ。
 千尋、電話なのね……」



寝室からリビングに顔を出したお母さんが
僕から受話器を受け取って、電話に出た。



お母さんは、その場で立ち尽くしたまま
受話器を持った腕を力なく落とした。



「お母さん」
「リズママ」


勇人がお母さんの
手から受話器を抜き取って片づける。




「水谷さんの用事、
 どうしたんですか?」


勇人と二人、覗き込んだ
僕たちに母は小さく呟いた。




「嵩継君のお友達が、
 病院の屋上から
 飛び降りたみたい……」





お母さんのその言葉を聞いた途端、
僕は病院の方へと飛び出していく。





慌ただしい処置室前。






そこには……事務長が
険しい顔をして中の様子をうかがっていた。





「こんばんは。事務長。
 様子はどうですか?」

「千尋坊ちゃま。

 うちの病院で
 こんな事件が起きるなんて」




事務長は、
そのままただ黙って中を見つめている。




「事務長。

 何処からか情報が漏れたみたいです。
 
 すでに病院の前に、
 マスコミが集まって来ています」



看護師が、慌てふためいたように
僕たちのところに駆け込んできた。