『お前が来たの嵩継絡みだろ。
アイツがおかしいのは
俺が原因だから。
アイツから聞いてない?
俺、骨肉腫って病気らしくてさ』
不意打ちのような爆弾発言に
目の前の勇人も、
絶句したように俺をじっと見つめた。
『お前、顔に出過ぎっ。
嵩継にしてもそうだけど、
まがりなりにも医者になろうって奴が
そんなにストレートに表情出すなよ』
『……すいません……。
僕、海斗さんの病名のこと知らなくて』
『気にすんなって。
俺も気にしてない。
それより俺が知らないアイツの話、
聞かせてくれよ』
俺は空白を埋めるように
アイツから聞きだした嵩継の物語を
自分の中に刻み込んでいく。
『なぁ。
お前にとって……
お前の存在理由って何?』
ふと浮かび上がった言葉を
紡ぎだす。
一瞬、戸惑い驚いた表情を
見せた勇人は軽く目を伏せて
呟いた。
『……千尋……』
『千尋?』
『そう……。
千尋は育て親の実の息子だよ。
千尋が居たから、
僕は今も生かされてる。
千尋は僕の存在理由だから』
思いもしなかった返答。
存在理由。
そう言い切った言葉の奥に、
あの頃から変わらない
俺の想いが重なっていく。
コイツと来たら……
存在理由……って
いいきりやがった。
でも
……こいつになら……。



