突然の別れから6年。
あの時、小さかったあのガキ、
橘高氷夢華(きつたか ひむか)とは
連絡を取りながら、
今日まで
アイツ……安田嵩継……を
探してきた。
氷夢華は高校卒業後、
医者になっているであろう
アイツを助けるために
放射線技師の資格をとるため
大学に進学した。
アイツが
進学したであろう大学へ。
それ以来、
学校が忙しいのか
彼氏が出来たのかは
わからないが
連絡がなかなか
取れなくなっていた。
そして……俺も……。
今は母親の小料理屋を手伝うため
板前の修業を終えて、
今年、この場所に店を移転させた。
その選択が……
アイツとの再会に
繋がっていたなんて、
気づきもしないで。
「海斗~。
ちょっと来てくれるかい?」
階下から母親の声が聞こえて、
その直後、
何かが倒れる音が聞こえた。
「おふくろ、
何やってんだよ」
椅子からひっくり返って、
床に頭をぶつけたおふくろ。
「あらら。
棚の上のお鍋を取りたかったの」
「そんなことくらい、
俺に言えって言っただろ。
無理しやがって」
毒づきながら、
母親を椅子に座らせて、
棚から一緒に落ちた、
鍋や箱のを片づけていく。