ガラリっと……
一気にドアをあけると……
中には……
水谷さんが
海斗の様子を
見守ってくれていた。
「おはよう。
嵩継君……。
体はもう大丈夫?」
優しく……
母が子に諭すように……
きいてくる……
心地よい言霊。
「……はい……」
「心も……
ちゃんと
守ってあげたみたいね」
そう言うと……
オレの傍に近づいてきて
海斗の
ベッドサイドの椅子に
座らせる。
そして……
ノーパソをオレの前に
ゆっくりと置く。
IDとパスワードを
入力して
逃げ出したあの日から
今日までの……
海斗の記録を……
全て閲覧する。
海斗が……
此処に……来た……
あの日の夜から……
今日までのカルテを
頭の中に叩き込む。
想像通り、屋上から
飛び降りたアイツは
脊椎を損傷して……
もう……歩くことは……
出来ない……。
癌に蝕まれた体は……
脊椎の手術を
これ以上……
続けられるだけの
体力を……
海斗には……
残してくれていない。
……アイツの……。
海斗の……
残された時間の
カウントダウンが……
本当に……
始まってしまう。
救急で再会した頃には……
思いもしなかった……
現実が……
残酷なまでに
鮮明に……描かれていた……。



