「いやなこと思い出した」

ぽつり言うと、翔平が足を止めてあたしを見る。

「いやなこと?」

「うん。あの樫の木を見ると、ひかりが健人に手紙を渡したときのことを思い出しちゃうの」

「ああ……でもさ、健人が言ったことを吉村は知らないんだから、良かったんじゃないのか?」

「良かった? どうして良かったの? あんなひどいこと言ったんだよ?」

健人の言葉が脳裏をよぎる。

『何熱くなってんの? それが気持ち悪いじゃん。人形みたいな根暗な女と俺、付き合う気ないし』

「俺も男としてあの発言は許せないけどさ、好きじゃない女に告られたって迷惑なだけじゃん? 亜美もそうだろ?」

翔平の指摘に返事に困る。