「……誘ってみるけど、わからないからね?」

「ありがとうー」

みのりはご機嫌な笑みを浮かべて「先に行ってるねー」と、部室を出て行った。

花火大会か……毎年、浴衣着てひかりと行ったんだよね。

ひかりは着物を着たときの所作が慣れているから、着崩れしなかったっけ。

あたしは1年に2回着ればいい方で、すぐに着崩していた。

そんなときは、ひかりがササッと直してくれたんだよね。

「いけないっ! 集合がかかっちゃう!」

みんなが出て行ったことに気づかず、部室に自分ひとりだった。

ドアの横にかけてある鍵をつかみ、部室を出ると鍵をかける。

鍵は顧問に預けるルールになっている。

容赦なく照りつける午後の太陽に、ハードコートは目玉焼きでも焼けそうなくらい下からの照り返しで熱い。

熱中症にならないように、何度も水分補給をする。

「あ、もう無くなっちゃった」

隣で飲んでいた汗だくのみのりの水筒の中身が無くなったらしい。