「早くしないと置いてくぞ〜?」




「ま、待ってよ〜!」






よし、後は髪を綺麗にして…っと!






「準備おっけー!」




「忘れ物ない?」






忘れ物は…






「ない!」




「よし!…あ、忘れ物」






なんだろう?と思い、陸人の方を見ていると、あたしの方へやってきた。






「忘れ物」






そう言って、あたしの顎をクイッと持ち上げる陸人。






──ちゅ




「……っ…!?」






一瞬何をされたかわからなくて、あたしは戸惑った。


けど、ちょっと経ってやっと理解できた。




キス…されたんだ…


軽く触れるだけのキス。




今あたしの顔は絶対赤いよね…




だって…、あんなのずるいよ…。






「よし、行こっか」






そう言ってあたしの手を取って歩き出す陸人。




なんで陸人はいつも余裕なんだろう…






「どした?」




「え!?う、ううん…」




「顔赤いって。誘ってんの?」




「さそっ、誘ってなんかないもん!」






誘ってない!


陸人のせいなんじゃん!




あんなことするからぁ……




けど、嬉しかった。


あたしとのキスが忘れ物だなんて…




いやーんっ、にやけちゃう!