次の日、未だヒロミは姿を見せず、本当は家でヒロミの捜索をしたいところだが、役員会があるため俺は渋々会社へ行った。

都心のオフィス街に一際大きくそびえ立つビル。曾祖父さんの親が明治の初めに起こした会社だが、今や日本を代表する商事会社だ。

真田家は筆頭の大株主で、いわゆる社主だ。当主は常に代表取締役、つまり社長を務めて来たが、それも亡父までになるかもしれない。なぜなら、俺はそんな器ではないし、やる気もないからだ。新社長の織田さんが、このままずっと続けてくれればいいなと思っている。


地下の駐車場から最上階の役員室があるフロアまでエレベーターで上がる間、いつもと少し様子が違うのを俺は感じた。それは何かと言うと、同じエレベーターに乗り合わせた社員の連中が、やけに俺を気にするのだ。

そういう事が珍しいのではない。なぜかは知らないが、特に女子社員が俺を意識する事はよくある事だ。だが、今日は女子に限らず、みな俺を意識している。中には俺に話し掛けるような仕種をし、しかしやめたりする人までいる。

いったいどうした事だろうか……