俺と浅井菊子さんが結婚するのは定められた事なのだと思う。そういう事になっているのだから抵抗しても無駄だろう。と思う反面、抵抗してみたい気持ちも俺にはある。

小松のしょっぱいチョコに俺が怒るはずだったのが怒らなかったように、既に未来は多少変わっているように思う。だったら、更に大きく変える事も可能なのではないだろうか……


「慶次、もう少し考えさせてくれないか?」

「え? もうあまり時間ないんだよ?」

「分かってる。少しでいいんだ」

「ん……じゃあさ、会ってみない? この人に……」

「それはまあ、会うだけなら……」

「オッケー。じゃあ、すぐパパにセッティングしてもらうからさ」

「分かった。それにしても慶次、おまえやけにこの人、浅井菊子さんを勧めるけど、なんでだ?」

「え? いやあ、この中ではダントツだと思うからさ……」

「案外おまえの好みのタイプだったりして?」

「ち、違うよ。信之さんに一番お似合いだと思うから……。ぼ、僕は早速パパに話して来るね?」


慶次はそそくさと書斎を出て行った。もしかすると、冗談で俺が言った事が案外当たりだったのかもしれないな。ま、そんな事はどうでもいいのだが。