小松がいるらしいスーパーに向かう車の中で、俺はハタと考えた。確か政宗君はこう言ったと思う。小松は、体が良くなったんで働きに出たと。体が良くなったとは、どういう事なんだろう……


ああ、そうか。小松は、赤ちゃんを堕したに違いない。それで悪阻がなくなり、体が楽になったのだと思う。

小松は今、どんな気持でいるんだろうか。俺への怒りで、腑が煮え繰り返ってるんじゃなかろうか。そんな時にのこのこ行ったら、どうなるんだろう……


「運転手さん」

「は、はい」

「えっと……何でもないです」

「はあ」


思わず引き返そうかと思ったが、それはやめた。正直、怒った小松に会うのは恐ろしい。あるいは、悲しむ彼女に接するのは辛い。だが、逃げてはいけないと思う。

赤ちゃんの事は、とにかく謝ろう。小松が俺を許してくれるかはわからないが、誠意を込めて謝るしかない。そして、出来れば俺の気持を彼女に伝えたい。はっきりとした言葉で。言葉にしないと、想いは通じないのだから。

彼女が俺をどう思ってるかは、わからないけども……


不安と緊張と、少しの期待が混ぜこぜになった俺を乗せた車は、もう間も無く着こうとしていた。愛しい小松がいる場所へ……