なぜこんな事になってしまったんだろう。何がいけなかったのか。何をどうしたらこんな結果にならずに済んだのか。

そんな事を考えながら、俺は眠りについていった。答えは見出せないままで……


翌朝、俺は朝食も摂らずに会社へ出掛けた。食欲がないのと、小松に会うのを避けたかったからだ。もし小松に会うと、俺はどんな顔をしていいかわからないし、昨日下した決断が揺らいでしまいそうだから。


幸い、と言うべきだと思うが、今日も朝から忙しかった。打ち合わせや会議、そして関連企業への訪問と来客など、俺の予定表はびっしりと隙間なく埋まっていた。そのおかげで仕事に没頭する事が出来、小松の事を考えずに済んだ。正確に言えば、あまり考えずに……だが。


そんな中、珍しい事だが母から電話が来た。ある事を予想して俺は電話に出たのだが、


『信之さん、どういう事なの?』

「何の事でしょうか?」

『惚けないでちょうだい。なぜ小松さんは出て行ったのかと聞いているの』


やはり電話はその事だった。小松は、昨夜俺に言った通り、屋敷を出て行ったのだ。

それはわかっていた事なのに、胸にぽっかり穴が空いたような、言いようのない喪失感に俺は襲われた。