「はあ? 俺、何か気に障るような事言ったか?」

「“どこのご令嬢だ?”って言ったろうが。なんで令嬢って決め付けるんだよ?」

「そこかよ? だってさ、おまえの家とか地位を考えたら、そういうものだろ? よくは知らないけどさ」

「そんな決まりなんかあるもんか。クソくらえだ」

「何だか機嫌悪そうだなあ。じゃあ、令嬢じゃないのか?」

「違う。メイドさ」


俺はズバリそう言ってみた。

兼続に機嫌が悪そうと言われたが、確かにそうなのかもしれない。今までこういう事はまずなかったと思うが、今の俺は何かこう……イライラする。その理由に、心当たりはあるけれども。


メイドと結婚すると聞き、兼続はさぞや驚く事だろう、と思ったのだが、


「へえー、そうなんだ」


と言っただけで、殆ど驚いた様子はなかった。


「驚かないのか?」

「そりゃあ驚いたさ。少しな」

「少しか?」

「少しだ。だって、おまえ自分で言っただろ? 相手は令嬢じゃないって。それとも何か? メイドは更に身分が低いとか? もしかしておまえ、職業で人を差別するのか?」

「そ、そんな事するか!」


思わず怒鳴ってしまった。今日の俺は本当に機嫌が悪いらしい。

……いや、違うな。兼続に不意打ちで図星をつかれ、それに焦ったからだ。