魁が出ていった後、あたしは静かに泣いていた。




悔しい。悲しい。とてつもない怒りもこみがってくる。




もちろんそれは、記憶をなくしてしまったあたし、姫になってしまったあたしに対する怒りだった。





「…ふぇっ…。」 





あんなに魁を愛してたのに。


あたしは何故記憶をなくしてしまったんだろう。


そんな大切な人を、何故ー…。






そして今、あたしの心は魁じゃない。





秋で、ときめいているのだ。








そんなの、おかしいわよ…。






ずっとあたしを待っていてくれたのは、
魁…でしょう?