騙せた?

上手く行った?

どっち?


「………わかった」

「え」

「わからないけど、わかった。…そうか、だから紺ちゃんはあの時…」


光流君はそこまで言うと、悲しそうに眉をハの字にした。


「そうだね、たしかに色んな愛の形がある。長く続くコツってのも、間違ってないのかもな。恋愛感情って、いつしか当たり前なものになっていってしまうのが自然だから」

「………」

「それで君が上手く行ってると思ってるのなら、それが正解なのかも」

「…どういうことですか?」

「…最近までの自分を見てるようだよって話」


さいごの一言は、声が小さくてうまく聞き取れなかった。


光流君は、DVDをさっと抜き取ると、わたしたちの前から立ち去った。

なんだかよく分からないけれど、紺君に言いふらす、なんてことはしなさそうだ。良かった。

たぶん、納得してくれたのだと思う。



“恋愛感情って、いつしか当たり前なものになっていってしまうのが自然だから…”



そうだ。

わたしはそれが怖くて仕方ない。

だから、男と寝る。

他の男と寝るたびに、柊人君の特別さを感じることができる。

ああ、やっぱりわたしには柊人君がいちばんだって。この人しかいないんだって。柊人君にはいつまでも特別でいてほしいから。


わたしに夢中になってる男の下で、柊人君のことを考えると、とてつもない優越感にも浸れた。

ああ、わたしには他に一番がいるのに、このひとには今だけはわたしが一番なんだ、かわいそう、って。

ああ、柊人君はわたしのものなのに、わたしは柊人君だけのものじゃない、わたしの方が優位だって。


歪んだ愛情の確認かもしれない。