そういうと、真冬は目を丸くさせたままかたまった。
嫌いにならないで、なんて、生まれて初めて言った。
生まれて初めて、本気で誰かに嫌われたくないと、思った。
――愛想ふりまいて、人に好かれることが快感。
良い人ぶってる自分に酔ってる。
人に嫌われることが怖いから、
俺のこと好きな奴は皆大好き。
俺のこと嫌いな奴は皆大嫌い。
そう、思っていた。
とても、臆病だったから。
「…無理です、嫌いだもん」
「嘘おおお」
「そりゃそうですよ! トラウマできかけたんだから!」
「………確かに」
「当たり前じゃん、苦手な所の方が圧倒的に多いですよ。光流君みたいなタイプの友達いたことないですもん」
「……女子校だもんな」
「…でも、それで、光流君の良い所が、全部帳消しになるとか、そういう問題でも、ないから」
「……ポイント制だったら帳消しどころかマイナスいっちゃうけどな」
「ハハ、本当ですよ」
「……真冬」
「…ナンですか」
「ごめん。お願い、許して、俺、真冬と仲良くしたいよ…」
「っ」
「駄目?」
――――お前さ、俺のどこが好きなの?
あの答えは、全部じゃなくて、良かったんだ。
全部が好きだなんて、嘘くさいし、そうそうそんな人はいない。
どんな親友だって、1個くらい嫌いなとこはあるはずだし、家族にでさえうんざりするところはある。
俺は、ただ、
10個俺の嫌いな所があったとしても、それでも、俺にあきれないで、俺の好きな所をちゃんと見ていてくれるような、
それでも傍にいてくれるような、
そういう、人間に出会いたくて。
そういう人間なら、何が何でも手離してやるもんかって、思えると思うんだよ。



