「まふゆ…」

「遅いよ! 泣きたいのはこっちだよ!」

「ごめん…」

「何してたの!? 辞めるって何!? ここが好きなんじゃないの!?」

「っ」

「…ちゃんとしてよ!もっと! …バカっ、たらし、ちゃらんぽらんーっ」

「っ…」



―――『真冬は光流を好きなんだから、もっとちゃんとよく見てあげて』。

…ああ、そうか。

こういうことか。
、、、、
ちゃんと見るって、こういうことか。

嫌いって気持ちは、相手をちゃんと知ったから出る気持ち。

好きって気持ちも、相手をちゃんと見たから出る気持ち。


…バカだな。俺。本当、一体何をいじけていたのだろう。


真っ直ぐに恋をしている真冬が羨ましくて、そんな風に真っ直ぐに好かれてる紺ちゃんが羨ましくて、気づいてしまったんだ。自分の寂しさに。

そういう、心の奥底に溜まっていた寂しさに気付いたとき、自分が持ってないものを全部持ってる人間には会いたくなかったんだよ。

真冬や、紺ちゃんみたいな、そういう人間には、会いたくなかったんだよ。

自分のコンプレックスえぐられるのが怖くて仕方なくて。


「真冬、ごめん、本当ごめん」

「許さん!」

「うん、だよね、でもごめん」

「…あの人たちが抜けた分、ちゃんと光流君が出てよね」

「もちろん。出ます。ごめんなさい」

「…バイト用のスカート買ってよね」

「買います。超可愛いの」

「高くて可愛いのね」

「はい。なんでもする。でも、お願い、俺のこと、嫌いにならないで?」