「あ、まさかあんた!? コネ使って面接申し込んだ編集長の娘って」
「吉良さん、口が悪いですよ。しかもストレートすぎます」
「うっさいなあ、あゆ姉だって気になってんだろー」
ここは、あたしの部屋じゃないんだろうか。
そんな疑問が真っ先にあがったが、二人はあたしをじろじろみながら、当たり前のようにあのミスマッチな洋風のテーブルに昼食を広げていった。
「あ、あのはじめまして! 桜野真冬です!」
「お前春生まれなのか冬生まれなのかどっちだよ」
「な、夏です…すみません…」
「欲張りだな!」
「吉良さん…くいつく所が微妙です…」
「ていうかあゆ姉、お湯わかそうよ」
吉良(キラ)さん、と呼ばれる方は、そのまま椅子に座って、胡坐を掻いた。
アッシュブラウンの髪をワックスでツンツンにたてている。
お湯を沸かしにいったあゆ姉さんは、とにかく真面目な優等生、という容姿だ。黒いベリーショートの髪の毛が、その知的さをより強調している。
なんだかずっと圧倒されてしまったけれど、あたしはずっと聞きたかったことをやっと思い出した。
「あ、あの、すみません、ここってあたしの部屋じゃないんですか…?」
「あ? それは寝るときだけだよ。それ以外は皆の休憩所。この店の狭さ知ってんだろー」
吉良さんはバンバンと机をたたいて、コンビニのおにぎりの袋を乱暴に破った。
「もしかして、店長から話聞いてなかったですか?」
「あ、いえ。あたしがいきなり押しかけたんで」
「まあ」
「あ、あの、スタッフは2人しかいないんですか?」
「いや、もう一人いますよ、たぶんもうすぐ来るかと…ほら」



