「真冬、誕生日は」
「し、7月29日です」
「身長は」
「154です…」
「趣味は」
「一人神経衰弱です…」
「その髪の長さ、なんていうんですか」
「み、ミディアムです」
「了解」
「え!?」
真冬の答えを頭に叩き込んだ俺はすぐに仕事に戻った。
真冬が後ろで“なんの情報を盗られたんだ…!?”と脅えていたけど無視。
これで由梨絵に聞かれても容姿と基本的なプロフィールに関しては大丈夫なはず。
でも、性格のことを聞かれたらどうしよう。
まだそこまで把握しきれていない。
あとで光流に聞いてみようかな。なんか仲良しみたいだし。あゆ姉でもいいか。
「半チャーハン、チャンプル1つー」
「あ、はい」
いや、それより今は仕事に集中しなくては。
考えるのはそれからにしよう。
今日はキッチンの人がいつもより少ないから、店長が休憩の間は俺がリードしなきゃ。
…料理をするのは好きだ。
無心になれるし、次は何をやるのか、調味料の量はどのくらいか、そういうことを機械的に考えて淡々とこなしていく作業。
例えばゴロっとした1つのキャベツが、レシピ通りに調理をすれば、ロールキャベツに姿を変える。それを誰かが食べてくれる。美味しいと言ってくれる。
それはとても心地よかったし、達成感があるし、心が満たされる。
『やばいです! めっちゃ美味しかったです!』
…そういえば、プライベートで女子に手料理を食べさせたのは由梨絵以外で真冬が初めてだった。



