「柊人君、そういえばこの間言ってた新入りで住み込みの子って、どんな子?」

「どんな子…。俺と同い年です」

「年とかじゃなくて、こう、見た目とか性格とか…」

「なんで真冬のことをそんなに気にするんですか?」

「名前で呼んでるの!?」

「え」


普段大声を上げたりしない大人しい由梨絵なのに。

少しびっくりして言葉を返すことを忘れていると、由梨絵が慌てた様子で再び話し出した。


「ご、ごめんね。柊人君女の人のこと名前で呼んだりしないから…、びっくりして、ごめん」

そうだったかな。ただ単に、下の名前が印象的過ぎて、真冬しか出てこなかったから呼んだだけだったんだけど。

「あ、大丈夫です」

「あのさ、その人今日…」

「由梨絵、すみません。もう休憩時間が終わるので切ります」

「あっ、うん!」

「じゃあ、またあとで」


と言って、電話を切った。

アラームを切って、さっき脱いだ前掛けをさっと腰で結んだ。

極度の猫毛だから、少し寝ただけで寝癖ができてしまうのが悩み。

ぴょんとはねた前髪をそのままに、俺は1階へと向かった。


「お疲れ様ですっ」


店に入ると、すぐに真冬に挨拶をされた。

俺と目があっただけで目を輝かす彼女を見てると、ミルク(由梨絵の家のペットだった犬)を思い出す。

そういえばさっき、由梨絵が真冬のことを知りたがっていた。

これは次に聞かれたときに的確に答えられるようにしておかなくてはいけない。

俺は、皿洗いをしている真冬に近づいて、まるで面接官のように質問攻めをした。