「すごいね!! 紺君は、本当に自分の夢を叶える時がきたんですねっ」

「え」

「応援するっ、すっっごく!」

「真冬……」



俺の不安な気持ちを打ち消すように、ぱっと明るく真冬が笑った。

言うまでとても不安だったけれど、真冬に言って良かったと、心からそう思えた。

なんだか、ここ最近悩んでいたこと、喉に痞えていたものが無くなった気がした。


もちろん、本当に簡単なことじゃないし、俺が清水食堂を辞めるってことが、どれだけ大きなことかも、ずっとずっと悩んできた。

これから物件を探して、もっと技術を磨いて、構想を練って、今日朝からやるべきだったことは山積みだ。俺がいなくなった分を埋めるキッチンの人も、俺がちゃんと育成しなければならない。

口で言うのは簡単だけど、現実は厳しい。


未来は誰にも分からないけど、でも、それでも、俺が真冬の手をしっかり握っていなきゃ。


「真冬は、本当に表情がコロコロ変わりますね。さっきまで怒ってたのに」

「う、だって」

「もう触っても、いいですか?」

「え?」

「いいよね?」


……真冬の、日に当たると透けるように柔らかい色の髪が、好きだ。

寒いとすぐに赤く染まる頬が、好きだ。

簡単に包み込めてしまうくらい小さな手が好きだ。

ぱっと世界が明るく見えるような、眩しい笑顔が好きだ。




愛しいと思う。

素直に。

とても。





「こ、紺君…」

真冬の髪を撫でて、耳にキスをした。

真冬が、反射的にぎゅっと目を閉じた。

流れるように唇に小さくキスをして、真冬が瞼をゆっくり開いたときに、今度は深くキスをした。

最初は硬直していた体が、徐々に緊張がほぐれていくのがなんだかとても可愛く思えて、真冬の腕を引っ張って、自分の首にまわした。

真冬に、ぎゅっと、自分の意思で小さく腕に力を入れられた瞬間、どうにかなりそうになった。

正直どうにかなってもいい気もしたけど、真冬の誕生日もそう遠くないし、そんなに焦らなくてもいいかなって思えたから、ゆっくり唇を離した。

それから、ぎゅっと真冬を抱きしめた。