「あたし、残りの3カ月は、大切な人たちと大切に過ごそうって、決めてたのに…、なんでそんな勝手に…」
「荷物ももう、業者に頼んでまとめておいた。営業中に静かに行うよう言ってあるから、誰も気づいていないよ」
「なんでそんなことするの!?」
「…生意気な、男だったな。あの副店長は」
「え…」
「ムカつきすぎて、調べちゃったよ…、色々と。偶然知り合ったある女にお前たちの関係を壊してほしいと頼まれていたのもあってね」
「なにを…」
「俺たちの親の会社が、君の大好きな副店長の家族をめちゃくちゃにしたんだ」
「なに、言ってるの…?」
真冬の顔が、一気に強張った。
兄は、にたりと怪しく笑った。
ここから先のことを、真冬に聞かせたくない。
心から強くそう思った。
けれど、真冬は兄に詰め寄って問いただした。
「どういうこと?」
「紺野君の父親は僕たちの会社の社員だったんだ。紺野という奴が使えないと父が何度も愚痴をこぼしていてね…もしかしてと思ったら、本当に血縁者だったよ」
「え……」
「父は紺野父をクビにして、ショックを受けた紺野父は疾走、後から聞いた話、紺野の母は病気で、当時副店長の紺野君は赤ちゃんだったらしい」
「……そん…な…」
「この事実を紺野君が知ったらどうかな? きっとお前を一生恨むだろうね」
「やめろよもう!!」
俺はついに我慢しきれなくなって、兄の胸ぐらをつかんだ。
真冬は、うつむいたまま、もう何も話さなくなっていた。
とても、見ていられなかった。
折角、真冬は、進もうとしていたのに。
自分の力で、歩もうとしていたのに。
なんで今、こんなことを言うんだ。



