真冬の肩に顔をうずめて、真冬の体温を、存在を、何度も何度も確認した。
こんなにちっちゃい体で、今までどんな辛いことを経験し乗り越えてきたのだろう。
「光流君…?」
「真冬、こっち来て何してたの?」
「あ、うん、あのね」
そう言って、真冬は俺の腕をするりと抜けて、パソコンを見せた。
「まだちょっと早いんだけど、1人暮らしの部屋見つけてたの」
「え」
「…和解とまではいかないんだけど、これからの方向性や、言いたかったことを、やっとお母さんと話せたの。それで、4月から1人暮らしすることになって…」
「1人暮らし…?」
「うん。3月であの食堂とはバイバイの約束だから」
「そっか…」
なんだか、たった7日で、真冬がとても大人になってしまったように見えた。
俺よりも年下なのに。
真冬は、きっと、色んなことを頑張ったのだろう。
1人で。
紺ちゃんのことも、乗り切って。
「わ」
「よしよし」
「ぐしゃぐしゃだあ」
「頑張ったな」
「……」
頑張ったな。
そう言うと、真冬は一瞬泣きそうな顔になった。
だから思わず、もう一回抱きしめそうになってしまった。
その時だった。
携帯がポケットの中で鳴った。
…着信は、店長からだった。



