もう、いつの頃から始まった事なのかは誰も知らない。

気がつくと、この地は戦乱と混沌が渦巻いていた。

国は同盟を結ぶものと、隣国を支配の対象とするものの二つに分かれ、何十年も何百年も戦を続ける。

人は、より強い国の庇護を受けようとする民衆と、自ら剣を手に取り戦う騎士とに分かれた。

…その騎士にも、幾つかの種類があった。

自らが忠誠を誓うに足る国に集った『軍』、国ではなく強い力を持った騎士長に忠誠を誓った『騎士団』。

そして、俺のようにどこにも属さず、戦場から戦場へと渡り歩く『自由騎士』。






元々は俺も、騎士団に属する人間だった。

だが、運がなかったのか人を見る目が無かったのか。

所属する騎士団は、ことごとく戦に敗れ、次々と壊滅していった。

負け戦に慣れ始めた頃、俺は考える。

戦に勝つには、人望とか、信念とか、お題目ではない。

強いかどうかなのだと。

ならば、強い者につけばいい。

戦に勝てる者につけばいいのだ。

そうするには、軍だの騎士団だのに所属していては身動きが取れない。

だから俺は自由騎士になった。

何よりも自由を重んじる騎士になったのだ。