「涼は、俺を見舞いに来たんだろ?なんで花持たせてくんねーかなあ。」



「バカだね。これが勝負だよ。」



昔から。大成は…私に従順で。

素直に後をついてきていたけれど……。



私を…信じてみたのか、それとも…答えを知っていて、わざと少年を…勝たせたのか。


本当の所は…、

肝心な部分は…、

相変わらず、ワカラナイ。
いつまでたっても…見えてなど…こない。




「次、七並べでもする?」


大成は、軽快にトランプを切りながら…次の勝負を提案した。


「ポーカーがいい!」


「えっ…、そんなの知ってるの?!」


「うん。」



恐るべし…、小学生…!



「こいつら、院内学級に行くくらいしか楽しみなかったから…、俺が教えた。少し体調悪くても、これなら部屋で出来るじゃん?算数教えるより簡単だし、何より覚えも早かった。……なあ?」


「うん!簡単!」


「涼もやる?」


「………。………ってか、ルール知らないから、できな…」


「じゃあ、こいつらに聞きながらやれば?」


「……………。」


「やりもしないくせに、できないって決めつけんのは…、ただの怠けだ。」


「…………!」


「したくないことも、ここではしなきゃなんねーんだ。出来ることだけを選べんのは…、幸せな証拠だな。」


「………………。」



「……で、するの?しないの?」


「……するよ。大成になんか、負けたくないし。」




たかが…、カードゲームだ。

そう、ムキになることなんてないのに……。
大成が放った言葉は、ここにいる人達の気持ちを代弁しているかのようで…。

それを蔑ろになんて、出来るワケもなかった。






そんな……、複雑な気持ちで始めたゲーム。


が、誰より白熱したのは…


何を隠そう、この私であった。




二回の勝負は…、ガキんちょ達にしてやられて。


三度目の…、正直。






「……すげー……、姉ちゃんホントにババの子供じゃないよね?」

「え。これ、強いの?」


「なんてゆー名前か分かんないけど、大成兄ならわかると思う。」


ドン!

と見せ合った…手札のカード。




私のカードは、同じ数字のカードが4枚と、1枚の、ジョーカー。



「……大成、これってなんて言う『役』?」


「…マジか。これは、ジョーカー使う時だけに出来る、『ファイブカード』って役。」

大成は、一人ひとりの出揃った5枚のカードを指差して。勝負の行方を…辿る。


「で、俺が…ワンペア。…フルハウスに…、ノーペア、ストレート…。…涼の勝ちだな。」


「や…、やったー!」


ようやく手にした勝利に、ついぴょん、と跳び跳ねて。


喜びを露にすると……。



ガタっと音がして。


左足の甲に…鋭い痛みが走った。




「…………!!」


足の上に……倒れて来たのは。


真っ黒な……スノーボード。