治療の前日…

この日は、朝から母さんが来ていて。


俺の好きな食べ物や飲み物を…これでもかって言うくらいに買って来た。

当面、飲食には困らないだろうなって言うくらいの量で…


お陰様で、これまで真面目に完食していた、薄味の病院の食事を…

初めて残した。




ノアは遠慮してるのか、いつもみたいに「たいせー!」ってズカズカと俺のテリトリーに入り込んで来ることはなくて。


だけど、毎日俺らがそうしていたように――…


仕切りのカーテンは開けたまま、それから…


病室の窓は少しだけ、開かれていた。


俺と、ノアのベットは…窓際にあった。



たった一ヶ所…、明るい光をもたらすそこから、俺は、何度も何度も―――…



空を見上げた。




四角に枠どられた、狭いアオ…。





世間では、夏休み…。


地元の花火大会も近く、俺やノアと同じ学生達は…きっと楽しみに待っていることだろう。


毎年行っていた海水浴も。


今年は……行けそうにもない。






「母さん。」


「ん?」


「持ってきてほしいものがあるんだけど。」



「………?」



「俺の部屋の引き出しに…、ノートが何冊か入ってるから、ソレ…全部。」




今日も、外は……よく晴れていた。






白く、狭い…ハコの中。


僅かに見える…、青の色 。







俺が戦う舞台は、今――…




ここにある。