腫瘍の生検の結果が出て、治療方針を…話し合ったのは、この、前日だった。
「幸い、今の所…肺やリンパへの転移は見られませんでした。腫瘍の大きさ、状態を見る限り、早期に化学治療を施して…、腫瘍を叩いた後、手術をして取り出す方法が最良かと思われます。」
癌っていう言葉は一切なくて。
転移…、腫瘍…、化学治療…。
知らない言葉の羅列が――…続いていった。
「センセイ、悪いヤツ取れば…、それで終わり?」
無知であることは…幸せなんだって後からつくづく思ったけれど。
ここで、ひとつ…釘を刺してくれたことが。
両親への反発心を…軽くさせた。
「大成くん、決して簡単なことじゃあないんだよ?化学治療はね、腫瘍を小さくさせる効果もあるけど…副作用っていって、体の色んな機能を低下させてしまうんだ。」
「……………。」
「苦しいけれど、他の部分に腫瘍が引越しして棲みかを増やしてしまうのを防がなきゃあならない。」
「…………………。」
「人によっては薬が効かないことも…あるんだ。でも――…、頑張って乗り越えて、手術が出来るようになったら、そこでまた、君に選んでもらわなきゃいけないことがあるから…。早速だけど、来週から、治療を始めるからね。」


