言葉を失った両親に、俺は…痺れを切らせて。
「もう…、いい。」
部屋への階段を…、急いで駆けていった。
正確には、駆けたっていうよりは…
壁を支えに、よじ登ったってとこだけど。
「……痛い。」
ベッドにドカッと腰を降ろして。
しこりの棲みかに…そっと触れる。
痛みは…膝にあったハズだったのに。
引き起こした犯人が…そこから離れた場所に居るコイツだってことは。
不思議で…、
ちょっとだけ、怖くもあった。
遠隔操作を……されてるみたいで――…。
それに。
今まで 、何度も誤魔化して来たのに――…、痛みに限界があるってことを初めて知った。
それが、まさかこんなにも突然…来るだなんて。
「……………。」
ベッドの脇のガラステーブルの上に。
病院で親父が買って来た…アセロラジュースが置かれていた。
目の前が…次第に真っ暗になっていく。
それから――…急に笑いが込み上げて来た。
大袈裟なくらいに手を叩いて、ベッドの上で…笑い転げる。
「……上手いダジャレじゃん、親父…。」
『願掛け』って言ってた…アセロラジュース。
掛けていたのは。……本当は、
「……癌(ガン)…かよ。」
笑っていなければ、この暗闇から浮上することなど…できないと思った。
「………大丈夫…、じゃ、ねーよ……。」
初めて吐いた…弱音だった。


