戦いの場所が…、

立ち向かう壁が…、


今、どこにあるのか。



もう、既に――…見失いかけていた。



「……コーチ……。カーテンを開けて貰っていいですか。」



ベッドの布団の下で、


痛みを…堪えて。


それでも、平常心を保ったふりして…声を絞り出す。




開かれたカーテン。


そこからは、目映いばかりの太陽の陽射しが…


薄暗かった病室の全貌を…照らし出した。



「なあ…。薬…処方されたぞ?酷い時は飲むか?」



小さな台の上には、コーチが言うその薬が入っているのか…、

紙の袋が置かれていた。




「『A…c…e、t、a、m、i、n、o、phen』…?これって、何の薬?」


「痛み止め 。『アセトアミノフェン』。……調べたら日本じゃカロナー〇の主成分だとか…。」


「……てか、姉ちゃんは頭痛、生理痛には『ロキ〇ニン』の方が効くって言ってた。」


「お前はどうしてそう、どーでもいい情報に詳しいんだ。ロキ〇ニンはあまりこっちじゃ主流じゃないらしーな。」


逆光になったコーチの顔は…よく見えなかったけれど。

幾分か柔かい笑みを…溢しているようにも感じた。




「……言うほどあんまり痛くないので…いいです。」




「……そうか…。親御さんが来るまでは、俺が保護者代わりだ。…痛みが強くなった時には…言えよ?」


「大丈夫です。」



「………。――…頭のハナシをしてんじゃねーよ…。」