「この扉の奥には一人のWatchman(番人)がいる。彼に会ってからはもう普通の会話は出来ない」
ここで初めて黒男はスティッチに事務的口調を用いてそう宣言した。
「今は許されるのか?」
Gag(猿轡)を外されたスティッチは滴る涎を拭う事も出来ないままに聞き返した。
二度頷く黒男に対して、
「お互い“欲望”が満たされて良かった……」
スティッチはそう一言だけ告げた。
「満足出来たのか?」
黒男の質問にスティッチは、僅かな嫌みを交えて返した。
「君と俺とは持った“欲”が違っただけだ。この先にある君が叶えた物を見て決めるさ」
「この先は“紙一重”と云う訳には行かない……」
黒男のこの言葉を最後に、二人の短いやり取りはそこで終わった。


