見知らぬ若い男は聞き取りにくい声で「オカエリナサイ」と笑顔で言った。 詩織は「ゴメンナサイ」と一言呟いた。 しかし全裸の二人は狂ったように下半身を動かし、その動きは止む事はない。 二人の性交の息遣いが吉行の鼓動と重なる。 (狂っている……何が起きてるのかわからない……) およそ見たままの光景を心の中で呟いた時、腕の中に大事に抱えていた雛人形が、手の震えでカタカタとガラスケースにぶつかって音を立てた。