七月の深夜── 産婦人科の一室から発せられた小さな、しかし生ある鳴き声。 吉行はその部屋の中で、詩織の手を握りながらその声を聞いていた。 存在を知ってから八ヶ月。初めての対面に涙が流れた。 形ある真実── 永遠の愛を誓える存在に、心からそれを実感出来る存在に出会えたのである。 汗を滴らせ、疲れ果てた詩織は握る手にもはや力等無かった。 吉行は詩織を力いっぱい抱きしめ、 「ありがとう。愛してるよ」 そう伝えた。