「ちょっと待って!だって私はアナタの事なんて愛してないわ。愛してる人がいるのよ。その人との子供に決まってるでしょ」
まるで自分に言い聞かせるように話す詩織の言葉に、正人は鼻で笑いながら答えた。
「でも、愛なんかなくたって、嫌って程思い当たる節があるんだけど、俺だけかな……」
現実と自分の甘さと安易な考えに、黙ったまま言葉をなくす詩織に正人は言った。
「とりあえず、今後の事もあるしちゃんと話そうよ。いつもの所で……」
そして前方を指差し、車の発進を即した。
詩織は言われるがままにアクセルを踏み、“いつもの場所”へ向かった。


