車に正人を乗せた詩織は、五回目の点滅が過ぎても車のアクセルを踏まなかった。 「行かないの?」 いつもと違う詩織に向かって正人がそう聞いた時、詩織は大きく深呼吸して口を開いた。 「あのね……」 詩織の次の言葉が発せられる前に、先に言葉を伝えたのは正人であった。 「詩織さん……、妊娠してんじゃね?」 突発的に発せられたその言葉に驚いた詩織は正人の顔に目を移した。 その顔は僅かに笑みを浮かべ、詩織の腹部を舐めるように見ていた。