自分勝手に、思うままに生き……
取り繕い、様々な“形”を手に入れてきた吉行であった。
だがしかし、そこに映る“存在”は、望む望まぬに関わらず……、意志すら表に出さず、絶対的な“真実”として目前に居た。
そしてこの世に誕生する前から、いつしかどちらかが死に、終わりの日が来る時まで、確固とした“形”を示し続けるのである。
その刹那。
吉行は初めて、心の底から詩織とお腹の子とを抱きしめた。
“愛おしさ”を感じながら……
虚像等ではない。
嘘偽りなく、例え目前から消え去ったとしても証明される“血の繋がり”と云う真実。
「詩織……アリガトウ」
詩織は嬉しさのあまり泣きじゃくった。


