クレアの休養は退屈なだけであった。 チャンネル諸島を巡り、サンタマリアの街に出掛けたりしながら過ごしたが、本来観光等に何の興味も感じない。 ダイバー達を見掛ける度に『海の底』に魅力は感じたが、決して本来の趣旨を理解したものでもない。 ただ深海に沈んで人生をやり直したかっただけである。 「こんな時期に海へ潜るなんて寒くないのかしら……」 侮辱と裏切り、疎外と劣等、そして“狂気”への関心と非力な自分に取り憑かれたクレアは、死こそ選びはしなかったものの、既に人生を放棄していたのである。