偶然と突如去来した“陰”によって味わう事が出来た“優越感”ではあったが、クレアには意図的に手に入れる事等出来ない代物であった。

敗者の側の者がただ一度だけ、逆転の起死回生の勝利を手にしただけだ。

益々意気消沈するクレアを見て、両親は困惑した。

無論、彼女の心の“魔”に気付く事はない。

両親にとっては、生まれ時から背負わせてしまった愛する我が子への負担。

それをカバー出来る心を備えさせようと試みた努力が実を結ばなかったのだと理解した。