静かな書店の大きなフロアの一角。 「前金ね」 そう言って、会って間もない正人の持つ『観光案内』を手に取り、パラパラと中程まで捲って札を何枚か挟んだ。 そのままレジに向かう真理子を正人は無視して出口に向かう。 会計を済ませた真理子は正人を車まで誘い、買ったばかりの本を何も言わずに手渡し、 「これで今日一日はあなたを買ったよ」 その言葉の後、真っ直ぐにホテルへと車を走らせた。 助手席で開いた頁には万札が10枚挟んであった。