彼に近付いた女達…… もとい。彼に寄り添って来た女達は、彼の“実態”に触れ、彼そのものに抱かれ愛を感じて来たのだが、自らを誤解して生きる吉行にはそれがわからなかった。 『能力の高い者は“驕る(おごる)”位がちょうど良い』 これはとある精神分析医の言葉である。 自分の能力の高さを自覚し、有効に使用する事の出来る者は病む事は少ない。 例え他者に快く思われる事がなかろうが、過信の度を越えて落ちぶれようが…… 吉行の難は、本来の才能への過小評価であった。